
こんにちは!デザイン部責任者の平野です。
バナーのみに関わらずクリエイティブ関係のビジュアル表現(紙・バナー・動画など媒体に関わらず)を考えるときに、アイデアが浮かばない。もしくはアイデアは出るんだけれどインスピレーションや直感・思いつきのみで発想している。
なんて事はありませんか?
直感の全てを否定するわけではないのですが、必要な思考回路を踏んでいる事で「外さない表現」「伝わりやすい表現」が狙えるようになります。ではどういった事を考えて発想をするべきなのか。
今回の記事では、そんなアイデア発想法の話になります。
「RIDAP」って何?
弊社ではデザイナー初心者に対して、デザインを制作するための定義をシートにして可視化しています。復習のような内容になりますが「【第3弾】どうデザインを依頼して、何をチェックして修正指示を出せばいい?」にてコンセプトというものについて触れているいます。このシートでは何よりもまずコンセプトを言語化し、コンセプトを体現するための手段や計画を立てて迷いなくデザインが組めることを目的にしています。
項目 | 頭文字 | 項目 | 説明 |
---|---|---|---|
コ ン セ プ ト | R | ①Reaction(反応) | ユーザーにどのような反応をしてほしいのか。 遷移先への理解や情報訴求後の感情や行動はどうなるか。 |
I | ②Information(情報) | そのためにはどのような情報を伝達するべきか。 情報の取捨選択・優先順位など「①」に対して適切か。 | |
③Impression(印象) | それをどのような印象で伝えたいか。 それは世界観・雰囲気・ビジュアルが「②」に対し適切かつ「①」を促進しうるものか。 | ||
計 画 ・ 手 段 | D | ④definition(定義) | ①~③に対し現状の課題や問題・阻害要因を定義する。 |
A | ⑤Action(行動) | ④に対し取るべき行動・方法・選択肢は。 | |
P | ⑥Planning(計画) | 着手手順・何からどう始めるか・具体的計画やスケジュールは。 |
シートをキャッチーで覚えやすい名前にしたいとは思い、色々考えたんですが、ネーミングにセンスの無さを感じますね。それぞれの頭文字でライダップとなったという次第です。(Zでいい単語が見つからなかった…)
内容は表に書いてある通りではあるのですが、じゃあここから何をどうしてアイデアとなるのかを次で解説します。
アイデアの発想方法
デザインの好き嫌いはあるかもしれませんが、同じ題材で2つバナーを見本で制作しました。これの違いが何なのかを解説していきます。仮に女性写真を提供して「動画オプションの告知をする(料金1万円・顔出しで撮れる子もいる)」としましょう。


左がインスピレーションや直感で作ったもの、右が今回の発想法・思考回路によって制作したものになります。
こちらのバナーを持って説明をしていきます。
インスピレーション先行型
思考回路

①とりあえず女性を配置
②動画撮影オプションを大きく載せよう
③1万円はオプションだと高いから載せない方がいいかな~顔出しもできない子いるなら載せないでおこう
④衣装が可愛い感じだからそれに合わせてカラフルとか背景にもそういった図形とか入れてみよう
⑤マカロンとか合うんじゃね?
⑥カラフルな感じの方が色々合うかな
⑦空いたスペースで女の子の情報も入れとこう
⑧「スレンダー娘…」のところを入れて…
⑨下スペース余ってるから「ちっぱい」を入れとこう
⑩空いたスペースに「私に逢いに来て」をセリフで
⑩タップできそうなボタンはあった方がいいかな~
⑪セリフに合わせて「逢いに行く」にしとこう
⑫最後仕上げ的に手書き落書きみたいなの雰囲気付けに足しておこう
⑬完成~~やっほ~
ざっくり上記のような順に考えて制作しました。この「衣装が可愛い感じだから」とか「マカロンが合う」とか「落書き素材を雰囲気付けに」とか完全に「こんな感じでいいんじゃね?」という主観です。最終の出来がいい・悪いはともかく制作時にユーザーなる受け手(見る側)の配慮がされていない事が分かりますね。
改善・指摘のポイント
こうなった場合の指摘ポイントが複数あります。
・結局このバナーって女の子紹介の内容なの?
・撮影オプションはこの子限定のオプション?
・料金は無料?いくら?
・逢いに来てのセリフって何のため?
・リンクボタンはどこに飛ぶ?
もしデザインをチェックしてほしい。とこれを見せられたら、ざっくりこういった指摘をしたくなります。
本来の意図と誤った情報を伝達してしまう可能性が高いバナーという事がわかりますね。さらにセリフ部分はスペースが空いてるからとりあえず入れた感がありますし、リンクボタンの「逢いに行く」なんて機能がないので、意味が分からない…。結局このバナーは何をしたかったものなのだろうか。総じてクオリティが低いという印象ですね。
ここにおけるポイントは最終の広告の完成度は見た目の品質やクオリティに必ずしも依存しない。という事です。
行き当たりばったりの制作の仕方では情報訴求に一貫性が出にくくなってしまうのです。
まれにインスピレーションのみで全て筋の通ったデザインを引ける人がいますが、なかなか難しいものです。よほど波長が合わない限りは仕上がりにムラを感じることもあると思います。
特にロジックで考えずに直感で筋の通ったデザインを引ける人が、いわゆるセンスがいいデザイナーなんだろうと思います。
ロジック先行(RIDAP)型
思考回路

①Reaction(反応)
オプションの告知によって最終はユーザーの利用を促したい。そのための前段階として対応可能な女性を見てほしい。
②Information(情報)
魅力のポイントである、顔出し撮影が可能であったり、料金は必須になる。
③Impression(印象)
「動画」という印象を伝わりやくしたい。スマホで撮影しているイメージが実際のシチュエーションに近く一番分かりやすい。
考えていたことはこれだけです。シンプルですね。
残りの要素は例を載せておきますが、デザイナーの経験やスキルによるものので無視してください。
④definition(定義)→動画をアピールしたバナーの事例をあまり知らない…
⑤Action(行動)→いろんな事例を調べておこう。
⑥Planning(計画)→〇月×日までに調べてラフを書いてチェックしてもらおう。
みたいな感じですね。
バナーの内容を軽く触れておくと、ダメな例で出していた「金額が高いから載せない方がいい」とかはコンセプトを基に考えるといかに愚策であるかが分かりますね。なぜならユーザーは「お店→女性キャスト→金額」の順で探しているので、金額を載せなかったとしても、利用する際にユーザーは結局金額を確認して利用の有無を決めるので、必要な情報である事に変わりありませんね。
セリフ1つとっても「じゃあどこから利用できるの?」というユーザーに情報を補足する内容になっています。①反応を意識することで②情報に一貫性が出てくるようになるのです。
普段デザイン・広告というものを「③Impression(印象)」のみで考える習慣がついていると①②がずれてしまうケースがよくあります。こちらの印象とはつまり「何をモチーフとするか・どんな雰囲気にするか」を決める事ですが、ここにもポイントがあります。
雰囲気には正解がない

例えば先ほど2つのデザインが出しましたが、可愛いとかカラフルな雰囲気にしたければ全然変えられます。
この変更に関してはどちらがいいとか正解とかはないです。店舗や女性の雰囲気など、どこをベースに考えるかだけですね。
(「やっぱりこっちがいい」と③印象の修正が一番時間がかかるので、そちらだけご了承ください。)
雰囲気はいいのですが次のモチーフに関しては「間違い」があり得るので注意が必要です。
モチーフは最大公約数を取ること
そもそもモチーフとは何なのか。調べると「動機」とか「着想」とかとも言われるようですが、広告においては制作者・依頼者・消費者たちとの「何でイメージを共有するか」だと思っています。
そのモチーフに他者が共感ができないものは理解が得られないのです。

今回「③Impression(印象)」の主題が「動画を表現するにはどうすべきか?」になります。基本は連想ゲームのように考えますが、仮に「動画と撮る・見ると言えば?」みたいな問いに対し、不特定多数の人が上図のように「スマホで撮影しているイメージ」の方がいいと思っているであろう状態で、「動画といえば映画だな。だから映画館のスクリーンに合成する形にしてポップコーンやコーラを配置するようなデザインにしよう」となると、外してしまう結果になるという事ですね。
これはいかに合成の品質が高く、見た目がかっこよくても意味のない広告になってしまいます。
なのでこの「③Impression(印象)」の設定の際には極力「主観的な感性」ではなく、不特定多数の人が抱くであろう「イメージの最大公約数が最適解である」と頭に置いておいてください。
モチーフはレイヤー構造の第一階層にすること
さらに注意が必要な点としてモチーフを深く考えすぎないという事です。
過去にヘブンネットのロゴに季節感を持たせ、毎月デザインを変えるという取り組みがありました。後輩のデザイナーが3月の担当になりデザインを見てくださいと持ってきた事があったのです。見てみると、桃の花・ひな人形といわゆる3月らしいアイテムを使いながら「3月感」がちゃんと出ていました。
ただ1点ひな人形で、なぜか人ではなくウサギが着物を着ているイラストが使われていたのです。
「これは何故ウサギなんですか?」と聞くと、「ウサギといえばプレイボーイなんで、ヘブンにピッタリだと思って」との事でした。このデザイナーの思考回路では「風俗遊び→女遊び→プレイボーイ→ウサギ」となっていたのです。これには「誰が共感できるんでしょうか?」とツッコミを入れました。先ほどモチーフは連想ゲームと言いましたが、連想した1つ目くらいでないと共感が難しくなります。この例で言うと「3月と言えば→ひなまつり」くらいのレイヤーの第一階層がちょうどいい。という事ですね。
他にも例えば年賀状にキリンを使ったとします。仮に「あなたと会えるのを首を長くして待っております」というメッセージを秘めていたとしても、干支以外の動物が入ると受け取った方は混乱しますよね。モチーフとはイメージを伝えるのに強力であるからこそ使い方を間違えると伝わらないという逆方向に力を発揮してしまうのです。
広告やデザインは全てを言葉で説明するわけではないので、レイヤー構造の奥深くに行くほど「共感が生まれにくい=理解が得られない」と思っておくべきですね。
まとめ
ここまで色々と書いてきましたが意外とアイデアって簡単ですよね。
漠然とアイデアを出してと言われると難しく感じますが、
①コンセプトを設定する。
→Reaction(反応)× Information(情報)× Impression(印象)
②コンセプトを基に多くの人が「〇〇と言えば?」の1つ目に思い浮かべそうなもの。を考える。
これが拾えればそれが外さないアイデアです。
コンセプトにコミットして考えることができれば、特にセンスの要らない作業になるはずです。
とはいえ広告慣れしていないと、過去の事例であったり経験則から発想や判断することが難しい。。なんて事もあるかもしれません。そういった場合はぜひ弊社のデザイナーに頼ってみてください。
それでは!