
こんにちは!デザイナーの平野です。
デザインって不思議で、「文字を変えるだけでこんなに変わる!?」という瞬間があります。
実はフォントには、それぞれ性格や人生観なるものがある。
まじめな秀才タイプもいれば、派手なパリピもいるし、街角の頼れる兄ちゃんもいる。
今回はAdobe Creative Cloudのツールをサブスクリプションで利用していると使えるAdobeフォントにて、
個人的によく利用している「鉄板書体」4つに焦点をあてて紹介します!
もし書体に迷っているなら、とりあえず入れてみては?
目次
書体(フォント)とは?

書体とは「デザインされた文字」である
私たちは普段、あまり意識せずに文字を使っていますが、
実は書体(フォント)というのは、誰かが、時間と情熱を込めて“デザインした作品”です。
「線の太さ」「角の丸み」「傾き」「装飾」など、こうしたひとつひとつに、“作った人の思想・表現” が入っています。
つまりフォントとは、アート・工芸・工業デザイン・言語学が全部混ざった、
めちゃくちゃ文化的なプロダクトなんだと捉えることができます。
だからフォントには、冒頭で言ったように性格や人生観があり、
それをデザインに使う事で“命を吹き込む”みたいな形になります。
フォントには“著作権”がある
誤解されがちではあるんですが、書体は「文章データ」じゃなくて「作品データ」と分類できます。
よくPSDを譲渡した後に「フォントデータもください」と言われる事がありますが、
・勝手に複製する
・人にあげる
・フォントファイルを渡す
・ダウンロードして共有する
・誰かのPCにコピーしてインストールする
という事はできないのです。
デザインデータ(PSDなど)は我々の制作著作になりますが、フォントは”別”という扱いになります。
もっというと素材・写真などもそれに当たることがありますが、
弊社では商用利用可能かつフリー素材など会社間で確認したサイトのデータを使用しているため、
暫定的にデータの譲渡を可能としている形となります。
じゃあフォントってどうやって手に入れるの?
一般的にはこの3つ。
① Adobe Fonts などのサービスで利用する
Adobe Creative Cloud の有料プランに加入している場合、ライセンス込みなので安心。追加購入は不要。
今回はこのサービスで利用できるフォントを後ほど紹介したいと思います。
② メーカーからフォントを購入する(有料フォント)
モリサワ・フォントワークス・TypeBankなど。
弊社では「フォントワークス LETS」というものを契約しています。
実は記事を書いている時点で「年会費49,500円(税込)」と結構高額なんですね。
この契約を結んでいるためフォントデータは渡せない。という事になっています。
③ 無料・オープンソースフォントを使う
Google Fonts、BIZ UDなど。
※ここも「商用OKかどうか」は要確認。
ここの確認が難しいため弊社ではこの手のフォントは使用いたしません。
Didot:華麗なるファッション界の貴族

歴史背景:フランス革命前夜に登場した「モダン書体」の元祖
Didot は18世紀末、フランスの「ディド一族」によって生み出された書体。
当時の印刷業界は“より細く、より美しく”の競争の真っ只中で、
彫刻師 × 印刷職人 × 活字デザイナー 的な一族が、ひたすら美を追求していた時代だったようです。
Didot が生まれたのは、
クラシックな書体(オールドスタイル)→ 近代書体(モダン)へ移行する革命期。
フランス革命の前夜のような、社会が激変していく時代に、
「文字も華麗に革命しようぜ」と言わんばかりに誕生しました。
特徴としては、
・強いストロークコントラスト
・極細のヘアライン
・凛とした垂直的シルエット
となり、“18世紀のハイブランド” の象徴だった。という歴史があります。
性格:歩くだけで高級感が舞う、気難しき貴族
Didot はとにかく“気品”がある。
紙の上に置くだけで、そこが一瞬でハイブランドの広告になるような存在感。
細い線と太い線の緊張感がそのまま高級感につながっていて、
「余計な加工などしなくても上質だと伝わる」タイプの書体。
具体:コントラストの強さが生む美しさと弱点
Didotの最大の特徴は、縦線と横線の太さの差(ストロークコントラスト)が極端に強いこと。
見出し・大きい文字 → 緊張感・エレガント・華やかさ
小さい文字 → 細線が飛んで“読みにくい”
つまりタイトルや大きく扱う、かつ高級感などを演出したい際にうってつけ。
ただし本文などの小さい扱いをするには飾り・雰囲気付け以上の効果は出にくい。
また、垂直にスッと立つシルエットは、高級ブランド・美容・コスメ・ファッションに特に強く、
有名な使用例として、
ファッション誌「VOGUE JAPAN」「Harper’s BAZAAR」「Elle 」や
アパレル「ZARA」「Giorgio Armani」
などのロゴタイプのベースなどに使用されています。
実際自分で使用する際も女性の名前を英字に置き換えたり、雑誌風のデザインの際にタイトルっぽく使用したり、
高級感を演出するのに非常に役立ちます。歴史的にも理にかなった使い方と言えるかもしれませんね。
Bodoni:刺激的でドラマティックな演出家

歴史背景:イタリアの“活字狂”が生んだドラマティックな書体
Bodoni は18世紀末〜19世紀、イタリアのジャンバッティスタ・ボドニが生み出した書体。
この人がとにかくすごく、「活字が好きすぎて人生の全部を捧げた男」 と言われるほどのようです。
Didot と同じ時期に“近代書体(モダン)”として作られ、
影響を受けながらも、より攻撃的でコントラストの強い、劇場型のスタイルへ進化した。
ボドニは「美は整合性と規律に宿る!」という信念のもと、
システム化されたデザイン を追求したパイオニアでもあります。
特徴としては、
・Didot以上に強烈なコントラスト
・幾何学的でシャープなセリフ形状
・整然としたリズム感を持つ“規律的”な字形
性格:Didotの親戚だけど、情熱強めの舞台役者
Didot がパリの貴族なら、Bodoni はイタリアの舞台役者。
堂々としていて、光が当たる場所でこそ真価を発揮する。
華やかでドラマティックな雰囲気は、
広告・映画・ラグジュアリーの“インパクト勝負”に向いている。
具体:さらに強まったコントラスト × 主張の強さ
Bodoni は Didot よりさらにコントラストが強く、硬質でシャープ。
そのため、
大きな見出し → 圧倒的主役感、強い視覚インパクト
中~小サイズ → 線が細すぎて潰れる/読みにくい
という傾向がより顕著。
またセリフ(文字の端につく飾り)が“幾何学的で硬い形”なのも特徴で、
このシャープさが“冷たい美しさ”を生みつつ、その分だけ多少“使いどころを選ぶ書体”でもあります。
有名な使用例として、
ファッション誌「ELLE」「VOGUE ITALIA」
アパレル「Calvin Klein(旧ロゴ)」などで使用されていました。
こちらも実際使用する際は、高級感などを演出する際に使用します。
ただしそのままだと堅い印象にもなりやすいので、加工を加えたりなどで処理を加えることも多い書体です。
Futura:未来を切り開いたミニマリスト

歴史背景:バウハウス思想から生まれた“未来の書体”
Futura は1927年、ドイツのデザイナー「パウル・レンナー」によって誕生。
背景にあるのは バウハウスの思想。
「装飾を捨て、機能性と幾何学で構築せよ」という、当時としては革命的な考え。
Futura は“未来(フューチャー)”という名の通り、
余計な装飾を完全に削り落とし、
円・直線・三角 だけで組み立てる徹底したミニマリズムを採用。
特徴としては
・円・直線・三角形を基礎にした幾何学的デザイン
・装飾を排した徹底ミニマルな構造
・均一で安定したストローク(コントラストがほぼ無い)
性格:余白を支配するストイックな“ミニマリスト”
Futura はシンプルの鬼。
感情を排し「ただ美しい形」を追求したような静けさがある。
無駄を削ぎ落とした構造は、モダン・IT・建築・アートなど“理性ある世界観”との相性が抜群。
具体:均一ストローク × 幾何学デザインのメリットとクセ
Futura はストロークの太さが均一で、装飾が一切ない幾何学的な文字。
そのため、
ロゴ・タイトル → 未来感・モダンさ・洗練が出る
本文 → クールすぎて読み疲れることもある
という特徴がある。
x-height(小文字の高さ)がやや低めで丸さが強いため、
文章で使うとリズムがつきにくく視線が止まることがある。
そのぶん、短い言葉・単語・キャッチコピーでは圧倒的に強い。
そもそも幾何学形状は“硬い”印象を生むので、
優しさやカジュアルさを出したい場合は別の書体を併用するとバランスが良い。
有名な使用例として、
「Louis Vuitton」「Volkswagen旧ロゴ」「Supreme」「Red Bull」「NASA」などですね。
実際に使う際にも縦横の幅感が同じため、レイアウトする際にも扱いやすく、
「困ったらこれ」と言える書体。
高級から堅いものまで汎用性高く使用できる書体です。
Gotham:誰からも愛される“街のヒーロー”

歴史背景:ニューヨークの看板から生まれた、市民派フォント
Gotham は2000年、アメリカの Tobias Frere-Jones がデザイン。
原点は ニューヨークの街角の看板。
ビルの壁や古い標識に描かれた、あの無骨で誠実な文字たちを研究し、
“市民のための書体”としてリデザインした。
また元々アメリカのメンズファッション雑誌(GQ)の占有フォントだったところ、占有権が切れ、
その後一気に注目が集まったのが、
オバマ大統領の選挙キャンペーン「YES WE CAN」。
Gotham が全面採用され、アメリカ全土に広がった。
誕生背景も思想も“街のリアル”。
そこがGotham最大の魅力。
特徴としては
・ニュートラルで癖のない整ったサンセリフ
・x-height(小文字の高さ)が大きく視認性が高い
・ウェイト展開が豊富で汎用性が非常に高い
性格:どこにいても空気を整える、誠実系ヒーロー
Gotham は奇抜さでは勝負しない。
どこに置いても調和し、空気を整える“誠実系フォント”。
強すぎず弱すぎず、まるで「いい上司」みたいな存在感で、
企業・政治・公共・採用…どんな場面でも裏切らない。
具体:ニュートラル構造 × 高視認性 × 汎用性の鬼
Gotham は、ニューヨークの看板にルーツを持つだけあって、
視認性に強く、クセがほぼゼロのサンセリフ。
ブランドデザイン、UI、企業案内、広告、政治キャンペーン…
Gotham だけで全部作れると言われるほど守備範囲が広い。
弱点をあえて言うなら、“素直すぎてキャラが弱い” ところ。
尖った世界観のデザインには“良い人すぎる”と感じる時がある。
有名な使用例として、「Spotify」「MUFG(三菱UFJ銀行)」ファッション誌「GQ」などがあります。
直近では「オッペンハイマー」という映画でも使用されていました。
「マンハッタン計画」はニューヨーク・マンハッタンに本部を置いた計画だったため書体選定がピッタリですね。
実際、個人的に最近多用している書体になります。
どんなテイストのものにも合わせやすく、加工するに至っても扱いやすい。
「ゴッサム」という読みがバッドマンの「ゴッサムシティ」と近しいってだけで個人的にちょっと好き。(性格は真逆だが…)
まとめ
書体(フォント)とは「デザインされた文字」であり、生まれた歴史や使われ方から適した使用法がある。というお話でした。
「そんなに古くからあるの!?」というものもたくさんあり、
印刷技術の向上や産業革命などによって文字というものもアップデートされていっていますね。
ただ記事を書きながら私は原理主義ではないため、感性に沿って書体を選ぶことも多々あります。
デザインって勉強しようと思えば様々な要素があるため着眼点次第で奥深く面白いものが多いですね。
デザイナーでないと分からない知識などもたくさんあります。
ぜひ一度在籍デザイナーをご覧になり、制作実績や口コミなどからデザイナーを選んで指名してみてください!
それでは!
